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ケース1 〜正社員の退職勧奨〜

■はじめに
「辞めてくれないか」と誘う「退職勧奨」は昨今広く見られます。突然頼まれると気が動転して、「仕方ないのかな」と思ってしまいがちです。しかし、「辞めてくれないか」と言われたからといって、それを受け入れる必要は一切ありません。逆に、度をこしたしつこい退職勧奨は違法行為に当たります。また、「うちでは雇い続けることができない」とか「辞めろ」などという発言は解雇に当たりますが、会社には一方的に辞めされる権限が与えられている訳ではありません。

■相談
退職勧奨を受けたAさんのケースを紹介します。AさんはIT技術者として働いていましたが、会社から「退職してくれないか」という退職勧奨を受け、NPO法人POSSE(ポッセ)へ相談に訪れました。会社はAさんに対し、自主的に退職する場合には2ヶ月分の賃金を渡すなどの「好条件」を提示していました。Aさんはこの条件が妥当な水準なのかどうかをNPO法人POSSE(ポッセ)に相談してきたのです。

■「退職」はしない
退職勧奨の場合、これを受け入れて「得をする」ということは、あまりありません。また、退職勧奨は拒否することができます。退職勧奨を拒否すると会社は「解雇」するしかなくなります。退職勧奨が退職を勧めている状態であるのに対し、解雇は会社が一方的に辞めさせることです。しかし、解雇には法的に強い規制がかけられており、不当な解雇に当たるかどうかを争った場合には、それなりの補償の支払いが命令されることが多いのです。その水準は「二ヶ月間」よりも高水準になることも少なくありません。そこでAさんは退職勧奨を拒否しました。

■執拗な嫌がらせ
しかし、退職勧奨を拒否すると会社は高圧的な態度に出ることがほとんどです。「辞めてくれないか」から「お前は辞めるしかないんだ」、「会社のお荷物だろ」などと罵ることが頻繁に見られます。Aさんの場合にも、社長は酷く罵り、会社の施設を一部使えなくするという差別的な取り扱いもしました。これらの行為は退職勧奨の域を超えて、「退職強要」と呼べる段階に至っています。人格的な誹謗を行ったり、長期間にわたってしつこく退職の要請を行うことは法律上許されていないのです。また、会社の施設を一部使わせないなどの行為も、差別・人権侵害に当たります。

■解雇
最終的に会社はAさんに解雇を言い渡します。Aさんは私たちが紹介した弁護士とともに労働審判を申し立てました。その結果労働審判では、会社の解雇には合理的な理由があるとは言えず、逆に会社の差別行為や退職強要が問題であるという評価が得られました。結局会社がAさんに高額な和解金を支払うことで決着することとなりました。

■まとめ
NPO法人POSSE(ポッセ)に寄せられる相談の中には、会社に要求されて退職届けを書いてしまった後になってから「やっぱり辞めたくない」、「辞めるにしても、もっと高い条件にできないか」といったものが間々あります。退職勧奨を受け入れることで有給や雇用保険制度においても不利に扱われることが多いためです。その時点になってようやく「退職を受け入れる」ことが何一つ自分のためにならず、会社に仕組まれていたものだったということに気づかされてしまうのです。
ここまで見てきたように、退職を受け入れないことが身を守ることの最大の方法です。しかし、もしすでに退職勧奨を受け入れてしまっていても、強要の結果退職届を書いてしまったのであれば、それを取り消すことができます。