1月21日、東京高等裁判所でPOSSEが支援している過労死裁判の判決言い渡しが行われました。

判決言い渡し後行った厚生労働省での記者会見の様子

1月21日、東京高等裁判所でPOSSEが支援している過労死裁判の判決言い渡しが行われました。高裁は地裁での遺族完全敗訴判決を取り消し、会社の責任を認める逆転勝訴判決を勝ち取りました!

この事案は、2011年8月、岩手県奥州市にある機械部品製造メーカー「株式会社サンセイ」で働いていた当時51歳の男性(Aさん)が、一ヶ月あたり最大111時間09分もの残業を含む長時間労働が原因で亡くなったというケースです。

翌年(2012年)7月には、花巻労働基準監督署が「発症前2か月においては残業時間の平均が98時間とほぼ100時間に近い時間外労働に及んでおり、請求人は著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に従事していたと認められる」として労災を認定しましたが、会社は責任を認めることはなく、2012年12月に解散しています。そこで、遺族は2017年11月に、「株式会社サンセイ」そしてサンセイの役員ら3人が責任を果たすよう横浜地方裁判所に提訴しました。

しかし、2020年3月27日に下された判決で、横浜地方裁判所(長谷川浩二裁判長、松本諭裁判官、長岡慶裁判官)は「株式会社サンセイ」の責任は認めたものの、当時の役員らの責任は認めませんでした。また、Aさんに高血圧などの疾患があったことから、会社の責任を3割まで減額しました。とはいえ、すでに株式会社サンセイは解散しているため、会社の責任だけが認められても遺族は補償を一切受けることができません。この不当判決を不服として遺族は4月に東京高裁に控訴しました。

その判決言い渡しが昨日ありました。東京高等裁判所(第19民事部、北澤純一裁判長、田中秀幸裁判官、新田和憲裁判官)は、横浜地裁判決を取り消し、会社(株式会社サンセイ)の責任そして当時の取締役(工場長だった安倍由和氏)の責任を認めました。また、会社の責任は5割として、地裁判決よりも会社により重い責任があると判断しました。この高裁判決では取締役個人の責任が認められたことによりAさんの遺族が賠償を受けることができるようになりました。これは大きな前進です。会社が解散してしまっていても役員の個人責任を追求することで、遺族が補償を受けられるという前例になります。

ただし、3人いた役員のうち2人は免責されたことや、会社の責任が認められたもののその割合は5割という本人にも過労死の責任が5割もあったと裁判所が判断した点は納得できませんので、最高裁に上告する予定です。

この事件でAさんの遺族の代理人を務める指宿昭一弁護士は「一審判決は実質敗訴でしたが、控訴審でやっと半分の勝訴を勝ち取れたと思います。裁判所は、過労死にまで追い詰められた労働者の状況に対する理解がなく、会社経営者の都合は必要以上に配慮しているように思います。このような裁判所の常識を変えていかなければ、過労死はなくならないと思います。」と、今後の過労死問題に取り組むにあたっての課題について話しています。

また、Aさんの20歳代の息子さんは、「遺族に一切寄り添わない内容の地裁判決が出た後は裁判のことを考えるのが辛くなり、諦めようかと考えたこともありました。ですが、諦めずに控訴したことで取締役の責任を認めさせることができました。裁判で結果を出せてよかったと思います。私は今後も過労死問題の改善に取り組んでいきます。周りに過労死した人がいる場合、ぜひPOSSEに相談頂きたいと思います。」とコメントしています。

POSSEは2016年にAさんの息子さんと出会って以降、訴訟のために弁護士を探すところから、裁判での資料集めや情報発信など、過労死をなくすためにこの事件に取り組み続けてきました。まだまだ日本では過労死が蔓延しており、過労死だと思っても労災申請や裁判という形で声を上げることができない遺族がたくさんいます。そういったご遺族が権利を主張することができるように、今後も支援を続けていきます。過労死遺族からの相談も受け付けていますので、ぜひ困っていることがあればご相談ください。

NPO法人POSSE相談窓口
03-6699-9359
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