震災と労働法Q&A
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Q1.休業中、他の仕事に就いてよいのでしょうか。就業規則には兼業禁止の規定があります。また、休業手当を受け取っているときはどうですか。(Q1の解説はこちらへ

Q2.私の勤めるレストランは地震の被害を受けたため、使用者はコックのみ休業させ、他は全員解雇しました。このように一時帰休(休業)の対象者を使用者が好き勝手に選別してよいのでしょうか。また、この場合の雇用調整助成金の支給はどうなりますか。(Q2の解説はこちらへ





Q1.休業中、他の仕事に就いてよいのでしょうか。就業規則には兼業禁止の規定があります。また、休業手当を受け取っているときはどうですか。

A1.基本的に、休業中の兼業をしてはいけないということはありません。

<解説>
就業規則中には兼業禁止規定や二重就職禁止規定が置かれ、これに違反した場合は懲戒処分の対象となる旨が定められているのが通常です。これらの規定は、たとえ勤務時間外であっても、他社で就労すると疲労が累積して本来の労務提供に悪影響を及ぼすこと、労災発生の危険が増大することを理由とするものです(判例)。

しかし、一時帰休(休業)中は本来の労務提供自体が免除されるのですから、その期間アルバイト等に従事しても上述のような弊害を生ずるおそれは全くありません。したがって、この場合に兼業禁止規定を適用する余地はないといえます。休業手当を支給されているとしても、労働者にとっては多かれ少なかれ減収となるのですから、不足分をアルバイト等で補うのはむしろ当然のことです。

ただし、帰休中といえども従業員としての地位は続いていますので、競合会社に雇われて職務上知り得た企業秘密を漏らしたり、会社の名誉・信用を害する仕事に従事したりすることは許されません。

Q2.私の勤めるレストランは地震の被害を受けたため、使用者はコックのみ休業させ、他は全部解雇しました。このように一時帰休(休業)の対象者を使用者が好き勝手に選別してよいのでしょうか。また、この場合の雇用調整助成金の支給はどうなりますか。

A2.使用者が帰休対象者を好き勝手に選別することはできません。雇用調整助成金については、要件(解説に記述)を満たすかぎり支給されることに問題はありません。

<解説>
就業規則上、「業務上必要があるときは一時帰休させることがある」旨の規定があれば、抽象的・一般的には使用者に帰休命令権が生じると考えられます。しかし、帰休の対象者、期間、手当、実施手続きなどが具体的に決まらないかぎり、使用者の帰休命令権は現実化しません。したがって、これら諸事項については、労働条件対等決定の原則(労基法2条1項)に基づき、労働組合または従業員代表との協議によって定めるべきこととなります。

この点、雇用調整助成金の支給要件を定めた雇用保険法施行規則102条の3は、次のように規定しています。「休業の期間、休業の対象となる労働者の範囲、手当の支払の基準その他休業の実施に関する事項について、あらかじめ当該事業主と当該事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者)との間に書面による協定がなされ、当該協定の定めるところによって(休業が)行われるものであること。」(2項イ(4))

以上のとおりですので、使用者が帰休対象者を好き勝手に選別することはできません。また、雇用調整助成金については、上記要件を満たすかぎり支給されることに問題はありません。