会社で働く時に、会社と労働者で契約を結びます。この契約の内容を書面にしたものが契約書です。
契約で定めたことは、会社も労働者も守る義務があります。一度サインしてしまえば、不利な内容であっても法律等に触れない限りその条件で働くことになるのです。
さらに、契約書は重要な証拠になります。会社との間で、時にはトラブルが起こることもあります。会社が契約を守らないことを理由にトラブルになっている場合、契約書という証拠があれば解決する可能性が高まります。
このように契約書は非常に重要なものなのです。内容をよく確認し、納得したうえでサインすること、大切に保管することが大切です。
・求人票との違い
契約書より前に目にするものに求人票があります。
求人票は「この条件で契約したいので応募を募ります。」というものです。ですから求人票で書かれている項目や内容は、契約書と同じであることが普通です。
では契約書と求人票はどこが異なるのでしょうか?
異なる点は、効力です。求人票には働く条件を決める効力はありません。これに対して契約は先述の通り会社・労働者ともに条件を守る義務を発生させます。
原則的には、求人票でどんなに有利な条件が示されていてもそれは効力を持たず、不利であっても契約の際に示された条件が効力を持つのです。
したがって、契約書に求人票と似たような項目が並んでいたとしても、内容をよく確認しなければならないのです。
それでは、契約書の見方を解説していきます。
実際の雇用契約書において注意すべき点をピックアップしました。該当箇所をクリックすると法的解説を見ることが出来ます。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
従事する仕事の具体的内容を表す名称が書かれています。
【例】営業、販売、SE職、一般警備、経理事務 等々
しかし、実際には「職種」に記載されている以外のものも含め、様々な業務を求められます。また、厚生労働省の奨励金制度に該当するかどうかも書かれていることがあります。ただし、これらは事業者にとっての奨励金なので、実際働く労働者が受けられるものではありません。
【例】若トラ:若年者トライアル雇用 / 若奨:若年者等正規雇用化特別奨励金
/ 既トラ:3年以内既卒者トライアル雇用
*トライアル雇用に関して
*新卒インターンに関して
法的には、「期間の定めのない雇用(常用雇用)」か「期間の定めのある雇用(有期雇用)」かが大きな違いになります。
【例】常用雇用:「正社員」
有期雇用:「契約社員」、「正社員以外」、「パート」、「アルバイト」など
シンプルなものもありますが、「準社員」「フレンド社員」「サポート社員」など会社独自の(わかりにくい)名称が使われていることもありますので、中身をよく確認しましょう。
いわゆる正社員は「期間の定めのない雇用」であり、「常雇」と書かれています。契約社員など非正規雇用の場合、雇用期間が予め定めてあります。
【例】「○年○月○日〜●年●月●日」、「△ヶ月」など
雇用期間に定めがある場合は、期間延長(雇用契約の更新)の有無、その条件などを確認したほうが良いでしょう。また、「常雇」とあっても備考欄などに「トライアル雇用」とある場合は、ひとまず「3ヶ月の有期雇用契約」とされてしまうことも多いので、注意してください。
日勤か夜勤か、何時間働くのかを確認しましょう。
労働基準法では労働時間を1日8時間、週40時間以内としています(労基法32条)。休憩時間は1日少なくとも1時間(8時間を超えて働く場合。なお6時間を超えて働く場合は少なくとも45分)与えなくてはなりません。
*フレックスタイム制
時期により繁閑の差がある仕事では、変形労働時間制(→リンク)が導入され、時期により労働時間が異なる場合があります。
*みなし労働時間
みなし労働時間が導入されている場合、何時間働いたとしても、所定の労働時間働いたものとみなされます。所定の労働時間が8時間以内の場合は、何時間働いても時間外手当は出ません。(深夜手当は支払われなければなりません。)
ただし、どのような場合にも導入できるわけではなく、導入のためには様々な要件が課されています。
時間外労働があるのか、ある場合には何時間なのかを確認しましょう。ただし、「なし」または少ない時間が記載されていても実情とは異なる場合がありますので注意しましょう。
給料の額と内訳に注意しましょう。記載されている額に何らかの条件が付いている場合があります。
例)初任給 東京の場合
本給:月給23万円 諸手当含:月収34万282円
※残業手当は75時間発生した場合の金額です
※『諸手当含』は本給+残業手当
上記の例の場合地域が「東京」という条件が付いています。他の地域の場合にはいくらになるのか確認が必要です。
以下の手当は法律で定められたものであり、求人票に記載がなくとも支払われなければならないものです。これをあえて記載することで、見た目の給与額を大きくしている場合があります。
・時間外手当(25%増、大企業で月60時間を超える時間外労働については50%増)
・深夜手当(25%増)
・休日手当(35%増)
*年俸制
年俸制とは年単位で給与を計算するものです。法律に定められた制度ではありません。「うちの会社は年俸制で給与を決めているから残業代は出ない」という会社があります。しかし、これは誤りです。法律的に別段意味を持たない年俸制の導入によって、会社が残業代支払の義務を免れることはできません。
月給制の場合にも時間給を算出して、それをもとに残業代が計算されるのと同様に、年俸制であっても時間給を算出し、それをもとに計算されます。
*固定残業代(「営業手当」「役割給」など)
「営業手当」「役割給」などの名称で、月○○時間分の時間外手当を固定で支給している場合があります。こうした契約も以下の要件を満たせば有効とされています(裁判例)
@)割増賃金にあたる部分が基本給(諸手当)と明確に区分されていること
A)当該部分が法定の残業代を上回ること
B)現実の時間外労働が当該部分を上回る場合はその差額を支払うこと
☆ポイント
固定残業代を導入しているということは、その分の時間外労働を前提としているということです。月数十時間の固定残業代を支払っている場合には、それだけ労働時間が長いものと考えられますので注意が必要です。
例)大卒・大学院卒月給20万円(基本給+役割給)
※役割給は15時間相当の固定残業代。
※残業時間が0であっても固定で支給される。
この例の場合、月15時間までの残業代は出なくなります。
※15時間を超えた分については支払わなければなりません。支払わなければ違法です。月給20万円は残業代を15時間分含んでいるものなので、基本給はこれよりも低いということになります。
*みなし労働時間
みなし労働時間が導入されている場合、何時間働いたとしても、所定の労働時間働いたものとみなされます。所定の労働時間が8時間以内の場合は、何時間働いても時間外手当は出ません。(深夜手当は支払われなければなりません。)
ただし、どのような場合にも導入できるわけではなく、導入のためには様々な要件が課されています。
保険には、雇用(雇用保険)、労災(労働者災害補償保険)、健康(健康保険)、厚生(厚生年金保険)、財形(勤労者財産形成貯蓄)、退職金共済の項目が設けられています。
雇用、労災、健康、厚生については、基本的に必ず加入するもので、全ての労働者に適用されます。ただし、パートタイム労働者に関しては、労災は適用されますが、雇用、健康、厚生については条件があります。一方で、財形や退職金共済については、任意の制度となっています。
特に退職金に関しては、就業規則に従って給付されるもので、法的義務はないので、注意が必要です。
【例】雇用、労災、健康、厚生、財形、退職金共済
退職金制度なし
備考欄は一概に何が書かれているかとは言い切れないですが、応募方法や応募書類の処分について記載されている場合が多い。しかし、まれに、他の項目に書ききれなかったこと(例えば、仕事内容の説明や就業時間のシフトなど)、試用期間の期限や条件、勤務地について記載されている場合がありますので、見落としがないよう必ずチェックしましょう。
【例】勤務地→本拠地、備考欄→配属アリ
試用期間○ヶ月:同条件