2020/11/1 クルド人の生存権を守る実行委員会主催「仕事や生活に困っている外国人のための相談会」報告

2020年11月1日(日)、POSSEも加わっている「クルド人の生存権を守る実行委員会」が川口駅前で生活に困窮している外国人向けの相談会を行った。主に川口市・蕨市に住むクルド人を対象とし、医療・食料・法律・生活相談などの各ブースに分かれて10時から16時まで相談を受け付けた。

・助け合いが限界に
埼玉には約2000人のクルド人が暮らしている。多くは国内での弾圧を逃れるため難民として来日したが、日本政府はクルド人の難民認定申請を過去に1件も認めていない。そのため、難民認定を却下されたクルド人は「強制帰国」か入管施設への「収容」、もしくは一時的に収容を解かれる「仮放免」という立場に置かれている。
仮放免者は定期的に入国管理局に出頭することで滞在が「許可」されるが、その生活は過酷を極める。居住する都道府県から出ることすら入管の許可なしにはできない。国民健康保険に加入できないため、入院すればたちまち数十万の借金を抱えることになる。その上就労が禁止されているため、仮放免者は現実的に「再収容の恐怖を抱えながら収入を得る方法を探す」か「飢え死にする」かの二者択一を迫られる。入管行政が「外国人の人権は在留資格の枠内でのみ認められる」という前提に立っているため、在留資格のない「仮放免者」の生きる権利は一切認められていないのだ。
そのような状況の中、働ける人が解体業などの危険な労働に従事し、親戚や知人同士で助け合うことでなんとか暮らしていた。しかしコロナ禍で仕事が減少。生存を保障するセーフティーネットが存在しないため、仕事の減少は死活問題に直結する。クルド人コミュニティー内での助け合いも限界に達しており、多くの人が明日食べるものにも事欠く生活を送っている。

・「お金がない」300人から寄せられた訴え
今回の相談会の主な目的は、①医療や食糧などの緊急支援、②生活・労働相談に対応し、労働組合や行政による公的支援に繋げることの2つだった。
来場者数は約300人で、多くが家族連れだった。食料は開始から数時間でなくなり、医療ブースに一時50人待ちの列ができるなど、各ブース予想を超える数の相談が殺到した。
POSSEのメンバーは「労働・生活相談」のブースを担当し、120世帯から生活状況の聞き取りを行った。「仕事中の事故が原因で手が不自由になったが、健康保険に入れないため医療費が払えず病院に行けない」と訴える男性。出産を来週に控えているのに充分な医療を受けられていない若い女性。家賃を滞納して追い出され、今は遠い親戚の家に身を寄せる家族。全員がギリギリの状況で命を繋いでおり、手持ち数千円の人がほとんどだった。数百万円の医療費を払えず病院から訴えられている世帯や、家賃を数ヶ月分滞納している世帯も多く見られ、最終的に数十世帯が生活保護を希望した。男性の多くは解体の仕事に従事していたが、勤務中に怪我をしていて働けなくなったというケースも多々見受けられた。しかし、企業側は労災が適用されることについて一言も触れずにクビにしているケースがほとんどであった。こういった労働問題については、労働組合に加入することを勧めて、企業の責任を追求することを考えている。また今後は、各世帯と連絡を取り合い、川口市・蕨市に生活保護などの支援を求めていくとともに、寄せられた相談を集計し問題の発信に取り組んでいく予定だ。

・クルド人コミュニティーの若者達の協力
イベントには市民団体のメンバーや学生など、全体で100人ほどのボランティアが参加した。とりわけ重要な役割を果たしたのは、通訳として参加してくれた難民2世の10代の若者たちだった。支援者の多くはトルコ語を解さないため、トルコ語と日本語を自在に操り相談内容を丁寧に訳してくれる彼/彼女らは、支援活動に不可欠な存在だ。翌日の生活相談にも同行してくれた高校1年生の女性は、親戚や知人の通院や行政手続きに通訳として付き添っているという。クルド人コミュニティーを日常的に支えている若者たちと協力し、在留資格や国籍に関わらず生存が保障される社会を作るための運動に共に取り組んで行きたい。

・相談会を終えて

「仮放免者」の存在を日本社会がどれほど無視し続けてきたのかを見せつけられた一日だった。
 私は来場者の誘導などを行う傍ら、生活相談にも同席させてもらった。相談会終了間際に駆け込んで来た母子家庭の親子がいた。お金がなくて病気の治療が充分にできておらず、子供の持病のための薬代にも事欠いていた。相談員が生活保護を申請するよう助言すると、母親は「今まで何度も役所に電話したが、いつも『何もできない』と言われる」と首を振った。「どうして同じことを繰り返さないといけない?どうせ誰も助けてくれないのに」その言葉は、今まで行政が一度も彼女のSOSに応えてこなかったことを物語っていた。
コロナ禍で困窮がはっきりと可視化されたが、ずっと以前から彼ら/彼女らは「生存権」が否定された状態で命を繋いできた。何度も訴えを無視され、権利を求めることすら諦めかけている人が多くいた。
在留資格の有無が、人の命を左右していいのか-今まで誰もがこの問いに対し「見ないふり」を続けてきた。この相談会を最初のきっかけとし、難民の「生きる権利」が公的に保障される社会を求めていかなければならないと強く感じる。

※本文はPOSSEメンバーズブログの転載です。

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